広島県内農業ニュース

浸水被害乗り越えホウレンソウ出荷

2013.10.01
県内農業

 「何とか間に合った。平年の半分にも満たないが、これからがんばらないと」と沖忠孝さん(75)はそう話しながら、ビニールハウスでホウレンソウの成長の確認に励む。ハウスがある福山市箕島町は、9月上旬に温帯低気圧の接近や秋雨前線による長雨で、ほぼ全域が浸水。水はけのいい砂地が広がるため栽培が盛んなホウレンソウの圃場(ほじょう)も大きな被害を受けた。

 沖さんも、所有するハウス22棟のうち9月出荷予定の6棟が浸水し、水が引くまでに5時間以上かかったため、根腐れなどの被害は甚大。そんな中、被害が少なかったハウスを中心に栽培管理に努めたため、ホウレンソウは出荷できるまでに成長した。収穫適期となったものは、一株ずつ丁寧に鎌で刈り取って、下葉を取り除くなどの調整作業の後、200グラム入りの袋詰めを箱に20袋入れ、JA福山市箕島選果場に持ち込む。「天候は同じときがないので、毎年一年生のようなもの。少しでも挽回できるよう、圃場整備にとりかかりたい」と沖さんは話す。

 沖さんが加入する箕島園芸組合ホウレンソウ部会でも深刻な被害となったが、生産者が情報を共有し、圃場管理の徹底を図った。当初、被害額は部会全体で1,000万円以上と見られたが、最小限に抑えるための生産者の努力が実を結び、平年より少ないものの、出荷日にはホウレンソウの箱が並ぶまでに回復。平年同様、茎と葉がしっかりした日持ちの良いホウレンソウに仕上がっている。

 安全・安心で栽培履歴が確認できる「ふくやまSUN」が目印の箕島町産ホウレンソウが市場に流通することで、産地も活気を取り戻す。

(福山市)