広島県内農業ニュース

鶏平飼い3代目/広島県東広島市の早志さん/NY名店国内店に採用

2017.06.20
県内農業

 広島中央・早志健太郎さん再1東広島市の早志健太郎さん(32)は、採卵鶏5000羽を飼う養鶏農家の3代目。鶏の健康を考えた自家配合の餌にこだわり、安全・安心な卵の生産に取り組む。そのこだわりが評価され、米国ニューヨークで人気の卵料理レストランの日本1号店に食材として採用された。「海を越えて評価され、自信が付いた。生産者としての責任を全うしたい」と健太郎さん。信念を持った経営にさらにまい進している。

 養鶏は、祖父の智恵三さん(96)が70年ほど前に山を切り開いて、養豚や稲作、畑作とともに始めた。その後、父の俊三さん(65)が規模を拡大し、25年ほど前から平飼いを取り入れた。

 以前は農業にコンプレックスを抱いていたという健太郎さんは、次男だったこともあって就農を避けてきた。だが、就職して経験を重ねるうち、養鶏を続けてきた祖父や父の偉大さが分かるようになり、次第に「自分にも農業でできることがあるはず」と前向きな考えに変わったという。

 それまでの営業職を辞め、2011年にUターン。今は健太郎さんが養鶏部門を担当する。当初は販路拡大を試みたが、品質に自信を持って売り込んでも、想定した価格で売れないことがあった。「良いものを作ることが第一。品質が認められれば売り上げは付いてくる」と考えを変え、健康な鶏を育てることに注力した。

 餌は俊三さんが栽培する米を主体にしたものに切り替え、地元産の米ぬかやおからも配合。嗜好(しこう)性を高めて消化を良くするため、発酵させてから与えている。

 昨年、人づてに卵料理店「egg(エッグ)」が日本国内で卵を探していることを聞いた。腕試しのつもりで卵を送ったところ、3月に同店オーナーが訪れて鶏の様子を確認、採用が決まったという。

 「鶏が卵を通じて多くの人との出会いを育んでくれている」と健太郎さん。「常に信念を持って誠実に農業に向き合い、農業の持つ可能性や永続性を全うしていきたい」と意欲を見せる。
(広島中央)